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青池保子『イブの息子たち』

イブの息子たち 全3巻 完結セット(白泉社文庫)

忙しいというのに、ついつい『イブの息子たち』の全巻を読破してしまった。あんなバカバカしい話の連続を大真面目に描き続けられるだけでも、青池氏はものすごい才能と筆力の持ち主だと思わずにはおれないし、70年代後半の少女漫画にはタブーがないに等しかったのだなとも思った。

具体的に書くとせっかくこれから読まれる方にとってはネタバレになってしまうのであえて学者風の物言いによって抽象化して書いておくだけにとどめておくが、この漫画ではジェンダーとセクシュアリティに関していろいろと問題のある表現が山ほど出てくる上に、その手の表現が物語の結構においてきわめて重要なキーとなっていることは、今日の観点から観るとかなり問題だとは思うし、今だと絶対にこのような作品を発表することは無理であろう。もちろん、そうしたことがらについてしっかりと留意しておくことは必要ではある(つまり、今日の観点から過去の作品を改竄したり断罪したりすべきではない)が、「ポリティカル・コレクトネス」など欝陶しいと言ってあの一連の微妙な問題の存在を否認してしまうこともまた、もっての他である(昨今の本朝においては、こういう馬鹿が幅を利かせつつあるのだが)。ともあれ、実際に読み始めてみると、ぐいぐいと読まされてしまう上に笑わされてしまうところが、実に恐ろしい。

そんなわけで、情報量過多であるだけではなく、とにもかくにも大真面目に不真面目なことをやり倒しているコメディが大好きな方には一読を強くおすすめする次第である。ただし、あまりにもバカバカしい話が延々と続くので、その辺は覚悟されたし。日本の往年のギャグマンガや、19世紀のロシア文学の古典や20世紀の不条理文学、それから1970年代の少女マンガのバタ臭い絵柄にある程度慣れている人だったら、まあ大丈夫だとは思うが。あ、あと、1970年代のプログレッシヴ・ロックが大好きな人にもお勧めできる、かもしれない……。


セクハラを受けたら、すぐに弁護士といっしょに警察へ行こう!

【スクープ】大阪大学教授の重大セクハラと「隠ぺい疑惑」を追及する!~「学生の性器を触る」「布団で添い寝」でも処分は休職一カ月…?

ま た 阪 大 か !

という感想を抱いてしまったが、性犯罪の被害に遭ったら証拠物件を揃えて弁護士と一緒に警察へ行くべしという一言に尽きる。学内のなんちゃらかんちゃら委員会に訴えても、専任教員どうしの馴れ合いの下でこの件でのようにものの見事にもみ消されてしまうに決まっている。ひどい場合には、訴えた学生がさらにひどい目に遭いかねない。

常日ごろ思うことながら、「セクハラ」という言葉は使わずに、単刀直入に「性犯罪」という言葉を使うべきだし、加害者に加害の事実があったと認められた際には遠慮会釈なく当の加害者を「性犯罪者」と呼んでやればよいし、それ相応の社会的制裁を受けていただくべきであろう。性暴力を働いた外道オスを罰するには、古代中国式の宮刑に処するのが理想的だが、残酷すぎるというのであれば、体内にGPSを埋め込むだけではなく、睾丸や陰茎を外科的に取り除いたのちに女性ホルモンも強制的に投与してやればよい(女性の性犯罪者については、残念ながら思いつかないのだが……)。もちろん、宮刑は人権という観点から見ると許されざることであることは承知の上だが、強姦などの性犯罪は、かりに被害者が命を失わなくとも、相手の心を殺してしまう所業だということを今一度思い起こされたい。その点において、性犯罪は「魂の殺人」なのだ。だからこそ、性犯罪に関する法体系の見直しも必要となろう。もしかすれば、アメリカの「ミーガン法」なども参考にできるかもしれない。

良いチェコ日辞典や日チェコ辞典は、いつになったら現れるのか

http://www.lingea.cz/japonsky-velky-knizni-slovnik.html

日チェコ=チェコ日辞典がチェコの出版社から出されたとのことなのだが、はっきり言って買おうとは思わない。編者名を明記していないというだけで、信用ができない。また、見本をざっと見てみたところ、日本語のコロケーションが不自然であったり、実例を文単位であまり見せてくれていなかったり、語彙のチョイスに疑問を覚える内容であったり、またチェコ日の見本を見た感じだと動詞の不定形を示す際にもう一つの体(「たい」と読まれたし。言語学などの用語である「アスペクト」に相当する、スラヴ諸語に広く見られる概念)をきちんと明示していなかったりと、正直使いものにはならない。この辞書は、もちろん日本語を学んでいるチェコ語話者のために編まれたのだろうから、そうした情報は無駄だと判断されたのかもしれない。だが、この辞典は、日本語のネイティヴ・スピーカーは言うまでもなく、日本語の知識を媒介としてチェコ語を使う読者もまた買うことになろう(現在入手可能な日本語とチェコ語の対訳辞書は、残念ながら貧弱なものでしかないからだ)。そうすると、動詞の体のペアがきちんと明示されていないというだけで、利用価値が著しく落ちてしまう。動詞の体のペアがきちんと書かれているだけでチェコ語のノン・ネイティヴ・スピーカーがどれだけ助かるか、辞書を作る人にはしっかりと認識していただきたい。要するに、この出版社はニッチなニーズをきちんと読めなかったのか、あるいはあったところで完全に無視してしまったのだ。実にもったいない。もう少し頑張れば、この出版社は長期的にはより大きな利益が得られただろうに。

とまあ、せっかくの企画だったのに、残念極まりない。というわけで、対訳辞書を使う際には、まだまだイヴァン・ポルダウフ Ivan Poldauf の名著『チェコ英大辞典 Velký česko-anglický slovník』(この辞書は齋藤秀三郎の『熟語本位英和中辞典』に匹敵する名著だ。やや硬い目ながらも、訳語のチョイスが素晴らし過ぎる!)や科学アカデミーが出した4巻本(もしくは2巻本)の英チェコ辞典、それから2巻本のチェコ露辞典や6巻本の露チェコ辞典などに頼るしかなさそうだ。

高みの見物を決め込む自称社会学者について

https://twitter.com/p_sabbar/status/830678008323207168

「またやりよったか!」の一言です。わたしが問題の文章を読んだ時には、いかにもありがちな「普通の日本人」様の思考回路を皮肉っぽく手際良くまとめた後に、最後に社会学者っぽく解決策をそれっぽく見せているポーズを見せただけの、高みの見物にとどまるショーモナイ文章だなという感じがしたので、まったく腹も立ちませんでした。

本来ならば、やはり社会学者を名乗るからには、あの駄文に見られる皮肉や冷笑のトーンを排してもっと自分(たち)の寄って立つ位置をはっきりと示した表現にしないと、伝わるものもまったく伝わらないだろうに、とは思います。ですが、あの方がうん十年前からやらかしてきた今までのどうしようもない発言の数々に鑑みると(自閉症児に関する文章など、目を通しているうちに頭の血管が数本切れかねない酷い代物です)、あの方にそんなことを期待しても所詮は無駄かと思います。もうだいぶん以前から、あの方のことは「左派の曾野綾子」と見做しております。ですから、何を言っても蛙の面に何とやらだとは思います。

とは言え、あの方の文章には、ご本人の意図や文章の内容とは裏腹に、甚大なる影響力があります。下手をすると、排外主義者や新自由主義者らががこの記事を典拠として利用する可能性もなきにしもあらずです。ですから、彼女と同じぐらいに知名度の高い論客が、この記事で論じられている内容を一つ一つ分析し(「しばき」倒し)、新たな提言をし直す必要があると思います。