2017年2月17日金曜日

青池保子『イブの息子たち』

イブの息子たち 全3巻 完結セット(白泉社文庫)

忙しいというのに、ついつい『イブの息子たち』の全巻を読破してしまった。あんなバカバカしい話の連続を大真面目に描き続けられるだけでも、青池氏はものすごい才能と筆力の持ち主だと思わずにはおれないし、70年代後半の少女漫画にはタブーがないに等しかったのだなとも思った。

具体的に書くとせっかくこれから読まれる方にとってはネタバレになってしまうのであえて学者風の物言いによって抽象化して書いておくだけにとどめておくが、この漫画ではジェンダーとセクシュアリティに関していろいろと問題のある表現が山ほど出てくる上に、その手の表現が物語の結構においてきわめて重要なキーとなっていることは、今日の観点から観るとかなり問題だとは思うし、今だと絶対にこのような作品を発表することは無理であろう。もちろん、そうしたことがらについてしっかりと留意しておくことは必要ではある(つまり、今日の観点から過去の作品を改竄したり断罪したりすべきではない)が、「ポリティカル・コレクトネス」など欝陶しいと言ってあの一連の微妙な問題の存在を否認してしまうこともまた、もっての他である(昨今の本朝においては、こういう馬鹿が幅を利かせつつあるのだが)。ともあれ、実際に読み始めてみると、ぐいぐいと読まされてしまう上に笑わされてしまうところが、実に恐ろしい。

そんなわけで、情報量過多であるだけではなく、とにもかくにも大真面目に不真面目なことをやり倒しているコメディが大好きな方には一読を強くおすすめする次第である。ただし、あまりにもバカバカしい話が延々と続くので、その辺は覚悟されたし。日本の往年のギャグマンガや、19世紀のロシア文学の古典や20世紀の不条理文学、それから1970年代の少女マンガのバタ臭い絵柄にある程度慣れている人だったら、まあ大丈夫だとは思うが。

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